ニジマスが校内を泳ぐ 本物を使って“食育”
玄関ホールにつるされて泳ぐ「ニジマス」 |
毎年、全国養鱒振興協会は、都心の子どもたちに国産のニジマスを食べてもらい、その生育環境や味わい、高い栄養価について学んでほしいと、学校給食にニジマスを提供している。
今年は、東京都台東区立蔵前小学校の全校児童へニジマスを贈った。当日は、同協会の小堀彰彦会長が同校を訪問し、ニジマスについてミニ授業を行った。
ニジマスを使った献立は、「ニジマスの塩糀焼き」。キレイなピンク色とくせのない味に食も進み、この日のニジマスの残さい率は0・3%と大好評。
また3年生は、学習用に提供してもらったニジマスを観察しながら、クレヨンでニジマスを思い思いに描いた。
そのニジマスはラミネート加工されて玄関ホールにテープで吊るされ、風に揺られてニジマスが泳いでいるかのように輝いている。
知って・食べて・描いて・学ぶ―台東区立蔵前小学校
図工ではニジマスを思い思いにク レヨンで描いた(上)。全国養鱒 振興協会の小堀会長(写真下・右) と、蔵前小の河部栄養教諭がニジ マスの生態を説明 |
低カロリーでビタミン類やカルシウムなどの栄養素がバランス良く含まれ、DHA(ドコサヘキサエン酸)も豊富なニジマス。育ち盛りの子どもたちにヘルシーフードである国産ニジマスを味わってもらおうと、全国養鱒振興協会(小堀彰彦会長)は11月19日、東京都台東区立蔵前小学校(白井正之校長)の学校給食に国産ニジマスを提供。あわせて小堀会長が国産ニジマスについて説明し、その後、図工の授業で特別授業が行われた。
今回の特別授業を受けたのは、3年生の児童90名。「知って 食べて えがいてみよう!」を合言葉に、食べるだけでなく、様々な角度からニジマスに触れることがねらいだ。
素材感を失わない 塩糀焼きの給食に
静岡県富士宮市産のニジマスを使って、河部節代栄養教諭が考えた献立は「ニジマスの塩糀焼き」。焦げ目がきれいに付き、ニジマスの素材感が失われないものをということで決定した。
給食を食べる前に代表の児童が献立について、「きれいな水で育つ魚『ニジマスの塩糀焼き』です。ニジマスを使った給食は初めてです。よく味わって食べましょう。身はサーモンピンク、皮は虹色に輝くヘルシーな魚です」と紹介。
給食中に河部栄養教諭が全長約60センチの大きなニジマスを見せると、児童は大歓声をあげ「ピンク色でサケに似ていた」「初めて食べたけれど皮もおいしかった」と見た目や味も好評で、残ったニジマスをおかわりジャンケンする姿も。「ニジマスの塩糀焼き」の残さい率は0・3%で、学校全体でも好んで食べられていたことが分かる。
給食後は、小堀会長がニジマスの生態について説明。子どもたちは今食べたばかりのニジマスを思い出し、興味深く聞き入る。ニジマスの卵の写真を見せると「イクラみたい」と声があがる。すかさず「ニジマスはサケの仲間だから卵も似ているんだ
大きいサイズのニジマスに触れ る児童ら(上)。「ニジマスの塩糀 焼き」は、色も鮮やかでおいし く、ニジマスの残さい率は0.3% |
よ」と小堀会長が教える。卵から約2年から3年で大きなニジマスになると知り、驚きの声があがった。「本校の児童は魚が好きな子が多いのですが、ニジマスの話を聞いて、より興味を持ったのではないでしょうか。大きな魚を丸ごと見る、またとない機会となりました。1回の授業だけで終わらせるのはもったいないので、来年の3年生にも同じような体験をさせてあげたい」と河部栄養教諭は今後の展開を考える。
ニジマスを食べて・学んだ後は、ニジマスの絵を描く。見本をじっくりと観察しながら「ひれがどこにあるか良く分かった」などと細かい部分にまでこだわってクレヨンで描きあげていく。角度によって名前の通り虹のように光るニジマスを、カラフルに仕上げる児童も見られた。
本物を見ることで 食材に興味を持つ
描き終わった後は画用紙から切り取り、校舎に入ってすぐの広場につるされ、まるで本物のニジマスのように宙を泳ぎ回った。図工専科の堀江美由紀教諭は、「本物の魚を見ながら絵を描くのが楽しかったみたいで、気分も高まったようです」と授業の成果を語る。
授業を見学した区内の学校栄養職員は、「魚は苦手という児童が多いのですが、今日みたいな授業を行えば自分が食べる食材に興味が出てきて、残さずに食べてもらえるかなと思いました」と感想を語った。
◇ ◇
また、11月12日には、プロの調理師が挑戦する「第7回 国産ニジマス中国料理コンクール」(主催/全国養鱒振興協会、共催/(社)日本中国料理協会)の本選が行われた。
定食部門、アラカルト料理部門の一次審査を通過した10名が、本選に挑み、最優秀賞となる全国内水面漁業協同組合連合会会長賞並びに全国養鱒振興協会会長賞(金賞)は、定食部門が関崎常正さん(中国料理 煌蘭 川崎店)、アラカルト料理部門が甲田英幸さん(旭川グランドホテル桃源郷)に決定。
山中一男審査委員長は、「アラカルト料理部門はニジマスの可能性を探るものとして、過去に例を見ない作品が並びました。定食部門ではニジマスでなければ出せないような味を今後も求めていきたい」と講評した。
【2012年12月17日号】