女子の部が一勢にスタート |
東京の中学生の体力向上を目指して、東京都教育委員会は、全国的にも珍しい51区市町村を代表する中学2年生による地区対抗の第一回「中学生『東京駅伝』大会」を3月21日(日)、中央区晴海ふ頭の特設競技場で開催した。都内中学生の体力調査では全国平均を大きく下回っている。その改善に東京都中学校体育連盟が共催しての取り組み。当日は朝まで春の嵐が吹き荒れて、開催が危ぶまれたが1時間遅れで実行。中学生の力走に1万人の観客が惜しみない声援。その結果、初の栄冠は男女ともに手堅いレースを展開した町田市に輝いた。
開会に先立ち、東京都教育委員会の大原正行教育長は「この記念すべき第1回の大会出場、本当におめでとうございます。それぞれの地区の代表者としての誇りを胸に、日頃練習してきた成果を遺憾なく発揮し、思い出に残る大会にしてください」と激励。
向かい風の中で男子が力走を見せる |
大原教育長によるあいさつ |
〈女子の部〉
女子の部は、1・5kmと2・5kmのコースを16人が走り、全体で30km。1区では東大和市が快調な走りでトップに、2位は江戸川区。4区では足立区がトップに浮上、さらに江戸川区が追い抜きトップを走る。6区の時点で周回遅れの選手も見られるが、各地区熱戦を繰り広げる。11区では、再び足立区がトップに返り咲く。
アンカーとなる16区では、2位を走っていた町田市の谷萩史歩選手(南成瀬中学校)が足立区の選手抜かして優勝を飾った。町田市は1区で16位だったが後半、見事な追い上げを見せた。
〈男子の部〉
全員が陸上部というのは3チームだけとなった男子の部は、フルマラソンと同じ42・195kmを17人でタスキをつなぐ。スタートからしばらくは先頭と最後尾の差がなく混戦模様。1区での1位は港区、2位は町田市で、5区までは港区がトップをキープ。
6区で町田市が1位となり江戸川区が2位、港区は3位に後退。7区で江戸川区が1位に浮上し、8区では江戸川区と町田市がトップを争い、9区でも熾烈なデットヒート。11区で1位の町田市と2位の江戸川区は1分5秒差。12区では、八王子市が2位に浮上し、15区で2位の足立区が追い上るが、15秒差で町田市が逃げ切りアンカーの17区もトップのままゴール。男女共に町田市が優勝という結果になった。
順位 | 区市町村 | 記録 | 順位 | 区市町村 | 記録 | 順位 | 区市町村 | 記録 | 順位 | 区市町村 | 記録 |
1 | 町田市 | 4:09:25 | 14 | 府中市 | 4:23:31 | 27 | 狛江市 | 4:30:03 | 40 | 稲城市 | 4:34:29 |
2 | 足立区 | 4:10:30 | 15 | 新宿区 | 4:23:49 | 28 | 羽村市 | 4:30:13 | 41 | 東久留米市 | 4:34:34 |
3 | 八王子市 | 4:13:18 | 16 | 墨田区 | 4:23:58 | 29 | 世田谷区 | 4:30:14 | 42 | 小金井市 | 4:35:41 |
4 | 練馬区 | 4:15:57 | 17 | 目黒区 | 4:24:02 | 30 | 文京区 | 4:30:38 | 43 | 清瀬市 | 4:35:49 |
5 | 大田区 | 4:16:17 | 18 | 日野市 | 4:24:15 | 31 | 立川市 | 4:30:46 | 44 | あきる野市 | 4:36:11 |
6 | 豊島区 | 4:17:52 | 19 | 江東区 | 4:25:00 | 32 | 西東京市 | 4:30:52 | 45 | 武蔵村山市 | 4:37:05 |
7 | 江戸川区. | 4:19:38 | 20 | 渋谷区 | 4:25:06 | 33 | 国分寺市 | 4:31:08 | 46 | 小平市 | 4:39:22 |
8 | 港区 | 4:20:40 | 21 | 中野区 | 4:25:17 | 34 | 品川区 | 4:31:28 | 47 | 国立市 | 4:40:51 |
9 | 東村山市 | 4:20:44 | 22 | 杉並区 | 4:25:36 | 35 | 中央区 | 4:32:16 | 48 | 千代田区 | 4:42:23 |
10 | 三鷹市 | 4:21:02 | 23 | 台東区 | 4:27:02 | 36 | 調布市 | 4:32:48 | 49 | 瑞穂町 | 4:49:22 |
11 | 北区 | 4:22:50 | 24 | 青梅市 | 4:27:53 | 37 | 武蔵野市 | 4:32:50 | 50 | 葛飾区 | 4:50:54 |
12 | 荒川区 | 4:23:26 | 25 | 板橋区 | 4:28:37 | 38 | 昭島市 | 4:33:06 | |||
13 | 東大和市 | 4:23:28 | 26 | 多摩区 | 4:29:54 | 39 | 福生市 | 4:34:19 |
〈選手コメント〉
●女子の部/町田市16区の谷萩史歩さん「みんながつないできてくれたタスキなので、頑張って1位でゴールしようと思いました。走っている時は腕の振り方に気をつけるようにしました。監督からは自信を持って最後まで頑張れというアドバイスがありました」
●男子の部/町田市6区の山崎諒くん「最初から1位になることしか考えていませんでした。1年の頃から陸上部で練習していますが、今回の大会に向けては昨年12月の半ばから練習を始めました。とにかく気を抜かないように走りました」
●総合優勝した町田市の比良太健一総監督「選手が頑張ってくれたので、男女とも優勝という予想以上の結果となりました。練習の際には陸上部の顧問を中心に常に20人ぐらいの組織で指導していますので、それが良い結果に結びついたのだと思います。公立と私立の学校の連携もうまく取れて、チームが優勝できて良かったです」
女子の部ゴール(右) 男子の部ゴール(左) 町田市が総合優勝を飾る(中央) |
〈レース中〉
女子のスタートを振り返って、解説の瀬古利彦さんは「1区でトップの東大和市の選手はダイナミックなフォームでした」、同じく解説の増田明美さんは「彼女の4分48秒は素晴らしい記録」と話す。
走ることが好きな選手、得意な選手、苦手だが頑張っている選手など、さまざまな選手が出場しているだろうが、「どうすれば走ることが好きになれるか」について、増田さんは「屋外を走ると変わっていく景色を見ることで飽きることなく自然に楽しく走ることができる」と語る。
この駅伝では、陸上部だけでなく、野球部や水泳部、園芸部などさまざまな生徒が練習を積んで参加しているが、それについて瀬古さんは「今回は陸上部ではない子も走っているけれど、それが自分の新たな能力の発見につながることもある」と話し、増田さんは「私も軟式テニス部でしたが、駅伝の助っ人として参加したことがきっかけで陸上を目指すようになった」と経験談を述べる。
近年部活を行う子どもが減っていることについて二人は「運動ばかりしていると成績が落ちると思われているが、それは間違い」(瀬古)「体力が上がると、意欲も高まるので学業につながる」(増田)と学業とのつながりについて声を揃える。それだけではなく「その時は無駄と思えるような練習が、後になって力になっていることが分かる」と瀬古さんは述べる。
〈終了後の講評〉
瀬古さんは「私は東京都の教育委員ですが、中学2年生の体力は全国から見ても低い方です。勉強はできるのに体力は無いというのでは21世紀の日本を背負っていけない。こういう駅伝があると、みんなスポーツに興味を持つから良いと思いましたね」と、東京都の初の試みを評価。
増田さんは「放送席の近くにタスキの中継地点がありましたが、みなさんがタスキを渡す時や受ける時の表情を見ていて、胸が熱くなってしまって、駅伝ってこうした友情の受け渡しもあるから本当に素晴らしい競技だと実感しました」とレースを振り返った。
「この大会は来年以降もずっと続けるんですよね」と瀬古さんが大原教育長に問いかけると「必ずやります」という頼もしい声があがった。
‐‐開催の意図は
「部活動などで日頃から運動している生徒と、そうでない生徒との二極分化が体力調査から見られます。全国との比較では、東京都は全ての項目で下回っている。運動に親しむ機会として駅伝は、身近な友達が地区を代表して走る姿を応援するなど、良い機会になるでしょう」
‐‐地区対抗、2年生限定の意味は
「地区内の公私立から学校を横断して選手を選抜、団結式や合同練習会、揃いのシャツを作るなど、大会に向け地域で盛り上がっている。これを機に近隣校の生徒・指導者間で交流がより促されると期待します」
「学年を限定することでより多くの生徒に出場する機会が与えられます。毎回同じ生徒にならず新しい生徒が出られるので、大会が定着すれば駅伝出場を目標にする新入生がいるかもしれません」
‐‐大会への期待は
「各地区から男女33人と補欠含めて42人、51地区で選手だけで2000人以上が参加。指導者や保護者・友人、関係者など総勢1万人を超える大会になる。選手は友だちや学校や地域の代表であることを誇りに思って、自己の可能性にチャレンジしてほしい」
「またこの大会が継続・発展することで、公立私立を問わず学校間の関係がもっと近くなること。そして少しでも多くの生徒に、スポーツに親しむ楽しさ素晴らしさを発信できるよう期待します」
(武蔵野市立第二中学校長)
会場中央スペースで、選手の健闘を応援する吹奏楽やダンスなどのイベントも披露された。大会を盛り上げる力強い演奏や華麗なダンスなどで、演目が終了するたびに、大きな拍手や声援が飛び、レースとはまた一味違う興奮の渦となった。
京橋築地小学校金管バンド | 月島第一小学校和太鼓 | 晴海中学校吹奏楽部 |
佃中学校月島太鼓 | 日本橋女学館バトン部 | 日本橋中学校吹奏楽部 |
日本体育大学チアリーダー |
【2010年4月17日号】