TOP健 康>特集

東京都の農業事情を見学

農産物のブランド化で地産地消を推進

1200万人余りの人口を抱える、大都市東京。建ち並ぶビルばかりがクローズアップされているが、実は都内の耕地面積は8340fで、特に畑の面積は8000f以上なのだ。その耕地のなかで、農産物のブランド化を通じて地産地消の推進を図っている事例が増えているという。そこで、東久留米市と清瀬市の現状を探ってきた。

柳久保小麦と通常の小麦
柳久保小麦と通常の小麦

東久留米の柳久保小麦 うどんなど商品化を

まず向かったのは、東久留米市。市の特産品としてブランド化を目指す「柳久保小麦」の畑を見学した。この小麦は、1851年、現在の東久留米市柳窪の奥住又右衛門が旅先から持ち帰った一穂の麦から生まれたと言われているが、丈が115a(通常は75a程度)と倒れやすいため、姿を消していた。

  又右衛門の子孫が育成を再開し、現在は柳久保小麦の会が先頭に立ち、特産品にしようと取り組み、うどんやかりんとうなど商品化もされている。事業としての確立はまだだが「市民の関心もあり、次からは手伝いとしての参加も考えています」と同会の高橋重雄会長は話す。

葉つきサラダ大根
葉つきサラダ大根

清瀬の葉つきサラダ大根 今後の課題は販路の確立

  続いて、葉つきサラダ大根普及ファーム会長石津和幸さんの畑を訪れた(清瀬市)。葉つきサラダ大根は、根から葉までが65aと通常の大根より小さいが、栄養価は2倍と言われ、少子高齢化に伴い生み出された。葉はカブに似てギザギザしており、名前のごとくサラダ感覚で食べられる。「今後は販路の確立が課題」と石津さんは語る。

  さらに、近隣のエコファーマーとして活躍する農家を見学し、農産物直売センター「みらい清瀬新鮮館」を訪れた。ここでは、地場農産物の販売を通じて地域住民と触れ合うイベント等が催されている。また、市内小中学校11校へは学校給食の食材として、地場産の23品目納入している。他、中学生の職場体験や農業体験の受け入れも実施。

産地限定牛乳の発売 消費者に届く時間が短縮
産地限定東京牛乳
産地限定東京牛乳

続いて清瀬市内に6軒ある酪農家の一人、増田武さんを訪れた。配合飼料の高騰で日本中の酪農家は存続の危機に立たされており、「学校給食にまで影響してしまうのでは」と増田さんは未来を担う子どもたちへの影響を心配する。

そのような中、協同乳業東京工場には、都内の酪農家から毎日新鮮な生乳が集められ、産地限定牛乳「東京牛乳」が発売されている。都内の酪農家から都内の工場に輸送することで消費者に届く時間が短縮されたことと、関東でも最上位を誇る乳質(年間平均乳脂肪分3・9%)が特長だ。

宅地の隣で行われる農作物の栽培や酪農作業など、近隣住民の理解が必要不可欠な都内での作業の中、農家は消費者のニーズに沿った新しい農産物の開発や、環境に配慮した栽培方法などを模索している。その努力を形にしていくことが求められる。