中学生の昼食事情
民間業者の弁当を導入


 完全給食実施率は小学校95・8%に対し、中学校は71・4%と低く、全国で給食を実施していない中学校は約1700校、ミルク給食のみが約1400校にのぼる。給食を実施していない学校では家庭から弁当を持参しているところが大半だが、保護者からは「毎日の弁当作りが負担」という声が依然としてなくならないのは確か。そんな中、民間業者による弁当販売を開始した神奈川県相模原市と横浜市の取り組みを取材した。


相模原市立鵜野森中

     券売機で毎朝申し込み
      昨年9月から市内3校で試行
 神奈川県は全国でもミルク給食実施率が最も高く県内中学校の52・3%に及ぶ。相模原市の中学校でも以前からミルク給食のみ行われてきた。昨年の9月から市内3校で業者による弁当受け入れを開始。同時に2校で券売機を設置している。

  ご飯の量選べ 残飯対策にも
 市立鵜野森中学校では、職員室前に券売機を設置。登校してきた子どもたちがお金を手に次々と券売機の前に並ぶ様子が見られた。操作は簡単で、お金を入れて画面上に表示された3種類の弁当(日替わり、カレー、お重)の中から、希望の弁当にタッチするだけ。値段は各400円。ご飯の量も3種類から選ぶことができるので、残飯対策になっているという。
 食券は名前を書いて昼食時まで各自が保管し、弁当と引き換えで渡される。受け付けた注文は電話回線で業者へ自動的に連絡されるので、集計や集金作業など教職員の負担は一切ない。「特に大きなトラブルはなく、教職員の負担も全くありません」と教務主任の和田正郷先生。
 申し込み数は一日60人ほど(生徒数422人)。申し込みをする子どもは若干1年生が多い傾向。昨年9月に導入されたこともあり、高学年の生徒にとっては慣れないのではと和田先生は話すが、今年4月に入学する新入生にとっては初めからこのシステムが導入されているので、申し込み者も増えるのではないかとのこと。
 「これまでは弁当を持参できない子どもは、途中でパンやコンビニの弁当などを買ってきていましたが、それらに比べると業者の弁当の方が、栄養バランスも優れ、美味しく、ご飯も温かいので子どもたちにとってもよかったと思います。ただあくまでも家庭のお弁当が基本ですが」と野村邦雄校長は話す。

  家庭の弁当が基本  選択肢の一つとして
 1年生の教室を覗いてみると、家から持参したお弁当を食べている子に混ざって、カレーライスを食べている子、お重弁当を食べている子の姿がちらほらと見られた。「毎日このお弁当では飽きてしまうでしょうが、昼食時の選択肢の一つとして子ども達の楽しみになっているのではないでしょうか」と野村校長。実際に私も試食してみたが、思っていたよりも品数が豊富で野菜類も多く、満足のゆく弁当であった。保護者の試食会でも評判がよいそうだ。
 市教委によると、保護者からは常に学校給食への要望が挙げられていたが、財政面や「中学生に一律の給食が果たして適切か」といった点など検討した結果、今回の業者の弁当導入を決定した。今年7月まで3校で試行し、状況を把握した上で市内全中学校へ拡大していきたいとしている。


横浜市立港中
     約1割の生徒が注文

 横浜市でも以前からミルク給食のみを実施しており、家庭からの弁当持参を基本としてきた。しかし家庭の事情等で弁当を持参できない子や、弁当を忘れてしまった子などへの対応策として、業者の弁当導入を開始して2年目。現在、市内145校中98校で導入されている。
 市立港中学校では、日替わり弁当、カレーライス、週替わりのお重弁当の3種類が出されている。値段は各450円。生徒数320名中、毎日平均40件ほどの申し込みがあり、取材に訪れた日は、2学期の弁当最終日ということもあっていつもより多く59件の申し込があった。
 昼休みになると、1階のオープンスペースに弁当と食券が並べられ、朝申し込みをした子どもたちが自分の名前が入った食券を手にお弁当との引き換えを行う。「お母さんの具合が悪い時や作り忘れてしまった時などに利用してます」と話す3年生の女子や、「カレーがとても美味しいので、週に2回はカレーを注文している」という2年生男子など子どもによって利用する事情は様々のようだ。中には毎日利用しているという生徒もいた。「カレー弁当やお重弁当ばかり続けて注文している子がいるようであれば、担任から声をかけるなど指導しています」と杉澤勝廣校長は話す。
 同校は中華街に隣接する地域であるため、外国籍の子どもも多く、家庭の事情で弁当を持参できない子も多い。「市内でも他の地域では、業者の弁当を必要としない学校もあるかと思うが、本校ではとても助かっています」と杉澤校長。以前は、登校中にコンビニ等で弁当やパンを買う姿も見られたが、それらの改善にもつながったとのこと。
 市教委では、弁当業者に対してカロリー表示や栄養素、塩分などの表示を義務づけているほか、生ものの使用の禁止など指導を行っている。また衛生面でも、業者対象に年一回講習会を実施するなど保健所と連携を図りながら安全で美味しい弁当の提供に努めている。

【2003年2月8日号】