日本学校保健会 保健室利用状況調査
中・高で保健室登校増加
児童虐待 2割の小学校で
2割近い小学校に被虐待児童が存在−。日本学校保健会(矢野享会長)がさきごろまとめた「保健室の利用状況に関する調査報告書」によると、家庭で虐待を受けている児童がいた学校の割合は小学校で2割近い16・6%であること、保健室登校をしている児童・生徒が中・高校で前回よりも増加していること−−などがわかった。調査は全国の公立小・中・高校1128校を対象に、平成13年10月に実施したもの。同調査はほぼ同じ内容で平成2年と平成8年にも実施している。
まず「児童虐待」については、小学校16・6%、小学校13・4%、高校9・1%と小学校が最も多く、この数字を前回(平成8年)と比べると、平成12年11月に「児童虐待 防止法」が施行され、教職員に「早期発見の努力義務が課せられたこともあってか、小学校で5・3ポイント、中学校で7・8ポイント、高校で0・2ポイントといずれも増えている。児童・生徒数でみると小学生140人、中学生84人、高校生52人。小学生の場合はほぼ1000人に1人という計算になる。
また過去1年間に保健室登校をした児童・生徒がいた学校は、小学校109校(29・1%)、中学校237校(63・4%)、高校182校(48・5%)で、前回調査と比べて順に8・0ポイント減、5・3ポイント増、4・1ポイント増−−という数字。特に中・高校で増えている。これを児童・生徒数でみると、小学生175人、中学生763人、高校生430人で、1校あたりの人数は小学校0・5人、中学校2・0人、高校1・1人という人数。前回調査と比較すると、それぞれ0・1人減、0・5人増、同数という結果だった。
最近減少傾向にあるといわれる、「いじめ・友人関係」については小学校29・1%、中学校59・9%、高校57・6%と中学校が最も多かった。
1校1日あたりの保健室利用者数については、小学校27・2人、中学校31・3人、高校33・1人。各校種平均で30・5人だった。このうちいわゆる・心の問題・で児童を支援した事例がある小学校における保健室利用者は29・8人、ない学校は20・0人だった。同様に中学校の場合事例あり32・2人、なし29・6人と、いずれも・心の問題・を支援している学校の方が、保健室の利用者数が多いという結果が出ている。<「保健室の利用状況に関する調査報告書」より>
□保健室の広さ
小学校、中学校、高等学校ともに1教室が最も多く、それぞれ55・3%、60・2%、68・3%。1教室以上のスペースをもつ学校もある中、1教室より狭い保健室の学校は小学校36・6%、中学校32・7%、高等学校12・5%。保健室の広さの満足度については、「今の広さでは狭い」と回答した養護教諭が小学校54・5%、中学校52・8%、高等学校52・8%と高く、「今の広さで良い」との回答を上回っている。
□保健室の施設、設備
1校あたりの平均ベッド数は小学校2・3台、中学校2・4台、高等学校3・2台。小、中学校ともに約半数の学校が「2台」と回答している。空調整備は、保健室に冷房設備がある学校は小学校57・5%、中学校59・4%、高等学校87・2%。暖房設備は小学校86・9%、中学校83・4%、高等学校87・2%。
□パソコン設置状況
保健室にパソコンが設置されている学校は、小学校15・8%、中学校23・5%、高等学校65・6%。設置校のうちパソコン平均台数は小学校1・0台、中学校1・0台、高等学校1・1台。そのうちインターネットや電子メールが使用できるパソコン台数は1校あたり小学校0・4台、中学校0・5台、高等学校0・5台。健康診断時のデータ集計などパソコンの利用による執務の効率化を図る養護教諭が増えているが、保健室にパソコンを設置している学校はまだまだ少ないのが現状。
□1人当たりの対応時間
養護教諭が、来室した児童生徒一人あたりに対応した平均時間は小学校10・8分、中学校16・2分、高等学校15・5分。平成8年度の前回調査と比較すると小学校は減少しているが、中学校、高等学校で増加している。対応時間が20分以上の割合は、小学校13・6%、中学校21・2%、高等学校21・5%であり、各校種とも増加している。来室理由の背景と、対応時間の関連については、「体の問題や体の悩み」については、小学校15・0分、中学校14・6分、高等学校17・7分。「心の問題や心の悩み」については、小学校30・9分、中学校31・8分、高等学校26・5分であり、いずれの校種でも、「心の問題や心の悩み」が「体の問題や体の悩み」よりも対応時間が長くなっている。
□複数配置
養護教諭の複数配置校は、小学校4・5%、中学校の6・1%、高等学校の13・9%。前回調査と比較するとそれぞれ小学校0・5ポイント、中学校1・3ポイント、高等学校1・0ポイント増。平成8年度の設置基準が30学級以上であったのに対し、今回の調査時は定数改善が行われ小学校851人以上、中学校・高等学校801人以上を基準としたことも影響していると見られる。
□スクールカウンセラー
スクールカウンセラーが配置されている学校の割合は小学校5・3%、中学校33・2%、高等学校7・7%。養護教諭とスクールカウンセラーとの連携は不可欠であるが、定期的な連絡や打ち合わせなどを行っている学校の割合は、配置校のうち小学校45・0%、中学校61・3%、高等学校41・4%。小学校、高等学校の半数、中学校の約4割で行われていないことがわかった。
【2003年2月8日号】