冬しか味わえないプレミアムフルーツ
スウィーティーを子ども達に
東京・荒川区立赤土小学校
地中海に輝く太陽の光をいっぱいに浴びて育った「スウィーティー」は、酸味が少なく甘味が強いので子どもたちにも大人気のフルーツ。今の時期しか味わえないこの限定フルーツを、一人でも多くの子どもに味わってもらいたいと、今月はじめ小学校、中学校など全国10校の学校給食に無償で提供された。その中の1校、東京・荒川区立赤土小学校の学校給食の様子を取材した。
10校の学校給食に無償提供
初めて食べる果物に喜びの声
「子どもたちは、ランチルームでの給食は大好きなんですよ。ちょっときれいなお部屋で食べられますから」。ランチルームへの階段を急ぎながら、学校栄養職員の宮島則子先生は話す。
JR西日暮里駅から隅田川に向けて伸びる尾久橋通りに面して建つ荒川区立赤土小学校。ここで12月3日、はるばるイスラエルから運ばれた果物の「スウィーティー」が、初めて給食の献立にのぼるのだ。子どもたちの反応はどうだろうと、同校を訪問した。今日ランチルームを使うのは、4年1組30名のクラスだ。
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ランチルームには黄色のクロスのかかったテーブルが3列並ぶ。そこに向かい合って子どもたちが座る。給食時間がはじまると担任の先生と3人の給食当番の子どもたちが後ろに並び、主食、牛乳、主菜、副菜、デザートを並んで待つ子どもたちのお盆にのせる。4分の1にカットされたスウィーティーも、次々とお盆にのせられた。
世界地図広げ 産地の学習も
「いただきます」を皆でいってから、宮島先生の給食についてのお話が始まった。「今日の献立は、食パンとザーサイ豆腐、それから新メニューのじゃがいものおやきです。それから、今日はデザートにスウィーティーという果物がでています。いい香りでしょ。このスウィーティーを初めて給食に使いました」。
宮島先生は、黒板を覆い尽くす大きな世界地図を指差し、「スウィーティーって、イスラエルという国から届いたの。イスラエルって、どこだかわかる?」。「ヨルダン川!」と、元気な子どもの声。
「すごーい、ヨルダン川がどこにあるか知っているのね。イスラエルってね、長い間、戦争してたりするけど、テレビニュースなどでみんな、聞いたことない?」。ひとしきりみんなが声をかけ、地図で確認する。
次にスウィーティーの収穫時期や、その健康への効果を説明。先生は血管と血液の模型を動かしながら、「健康な人の血液はサラサラでしょ。でも脂肪がたくさん混ざってしまった血液になると大切な心臓の血管にも脂肪がべったりとくっついて」と話すと、すかさず「コレステロール!」と、男の子。思いがけない質問も出て、先生も苦笑気味。でも、それもこれも、楽しそうだ。
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皆、最後にデザートを食べる。「おいしい!」「すっぱい!」「甘い!」と、いろんな感想を言いながら、スウィーティーを食べる子どもたち。あらためて感想を聞くと、元気な男の子は「とっても甘いですね」。「あれ、さっきすっぱいって、いってなかった?」と聞くと、「最初はすっぱいと思ったけど、だんだん甘くなってきた」。後で聞いた女の子も、同じことを言っていた。「どうしてすっぱいか教えてあげようか?最初は皮を一緒に食べちゃうからだよ」などと、隣の男子に教えている女子もいて、その観察力に脱帽。
スウィーティーを私も食べてみたが、さっぱりとして甘く、苦さがないので食べやすい。そして実がプルンとひきしまっていたのが印象的。
隣の宮島先生は、食べながらもスウィーティーの皮をむいてあげたり、子どもたちとおしゃべりしたり。おいしい給食に、ランチルームの楽しさが加わって、とても開放感のある楽しいひとときだったのだろう。
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学校栄養職員に聞く
−−−外国産の食材を使うメリットはありますか?
基本的には国内産のものを使いますが、外国産のものは国内産が品薄になった時などに使います。その時は国内産が高いですから、外国産が大量に輸入されると助かります。というのは、3、4年生の給食1食分は237円で、これでごはん、牛乳、主菜、副菜、デザートの献立を考えるわけです。限られた予算の中で、より良質でより多くの食材を使って子どもたちの健康づくりをするには、価格が安いのはとてもありがたいことです。
−−−逆に、外国産の食材を使うときに心配な点は?
遠い国から船便で長い時間をかけてくるので、保存のための農薬がやはり気になります。
−−−今回、イスラエル産スウィーティーを給食に使おうと思った理由は?
他の国の果物で、1年中出回っているものの中には、長い期間倉庫に保管するためポストハーベストの心配があるものもあります。しかし、今回のスウィーティーは、イスラエルでの収穫時期が10月から11月と非常に短く、また、日本に到着するのも11月から1月と限られています。よって長期保存のための過剰な薬剤散布の危険性は少ないだろうと判断しました。また、生産者の方から、どのような農薬を使ったかの資料がきちんとついていたので、子どもたちに安心して食べさせられると思いました。
−−−先生は食べられていかがでしたか?
とても新鮮だったので、安心しました。香りが良く、味はグレープフルーツのような苦みがなくて甘かったですね。
−−−児童たちの反応はどうでしたか?
良かったと思います。ただ、スウィーティーは皮が厚いので、小袋をむくのに苦労している子がけっこういました。これは、果物が新鮮なこともあります。今はお母さんがフルーツのサヤをむいて、フォークをつけてだす、ちょっと過保護な時代です。そんな時だからこそ、自分で皮をむいて、サヤをとって食べるという体験も、1つの学習かなと感じました。
あの後、1年生からお手紙をもらったんですよ。「きょう、給食でデザートにスウィーティーを食べました。すっぱくておいしかったです。そしたらおばあちゃんのところもスウィーティーが買ってあって、それもおいしかったです」というものでした。
−−ありがとうございました。
(2002年12月14日号より)