アレルギー対応給食
全国7割の学校で実施
昨年度、(社)全国学校栄養士協議会が全国8900人の学校栄養職員を対象に行った調査によると、単独校の70%、共同調理場の65%が「アレルギー対応している」と回答していることが明らかとなっている。平成12年度の調査結果と比べると、単独校、共同調理場ともに10〜15%増加。
主な原因食については「牛乳」「卵」「そば」の順に多く、「牛乳」「卵」については1万人以上の学校栄養職員が回答。そのほかの原因食品では、魚介類が目立ち「エビ」「さば」「かに」「いか」などが挙げられている。
原因食品に対する対応方法については、除去食、代替食、特別食の中で除去食が5割以上を占めているものの、徐々に代替食対応が増加傾向にある。しかしこれ以外の対応としては、依然「自分で除去」「代替食のみ持参」「弁当持参」と個別での対応に任せているという学校もあるようだ。
「対応していない」理由としては、「該当者がいない」「依頼がない」が合せて6割以上を占めており、全国的にみると南に多く、アレルギーと自然、地域等の環境とも関係があるのではないかと同協議会では推測している。
「施設、設備が不備」との回答は平成12年度に比べ減少。現在の施設の中で対応しているところが大半だが、特別調理室の設置が少しずつ進んでいるようで、共同調理場で3・4%、単独校では1・0%となっている。
今後の課題については、「これ以上人数や種類が増えると難しい」との回答が最も多く、対応することを前提として前向きに取り組んでいる姿勢がうかがえる。その他の回答として「連携が必要」「判断しにくい」「マニュアルが必要」などが挙げられている。
◎B東京都
東京都江東区立枝川小学校(稲富三夫校長・児童数663名)では、食物アレルギー児に対してきめこまかな配慮が行われるようになって早や8年余りになろうとしている。今年は、魚、卵、ゼリー、牛乳など5名のアレルギー児に対応している。
乳製品アレルギーの子どもにはすべて豆乳で代替し、牛乳を使ったポタージュやハンバーグなどにも豆乳を使用。魚アレルギー児に対しては、献立が魚フリッターの場合には肉類を使用するなど見た目を似せる工夫も。「できるだけ他の子どもたちの献立と変わらぬ雰囲気になるよう心がけています」と学校栄養職員の田米開初恵さんは調理の配慮点について話す。
アレルギー原因食品の中で最も多い卵については、フライの衣に使う卵を除去したり、かき玉汁の場合は卵を除去して豆腐の量を大目にするなどしている。また練り製品やハム・ソーセージなどの加工品に関しては、できるだけ除去しないよう卵白を使用していない製品をチェックし、そういった製品を納入するように心がけている。「日常生活でも、常に新製品などの成分表示を見て原料をチェックするようにしています」と田米開さん。
家庭に対しては、1か月の献立表のアレルギー原因食品に印をつけ、代替食を記入して渡している。さらに父母会などで個別に意見を聞く場を積極的に設け、医師の診断書だけではわからない家庭の食事状況や親の希望、子どもの変化などをできるだけ聞き出す。卵アレルギーの子の家庭では、まったく卵料理を出さないので、学校に入るまで卵を見たことすらないという児童もいたという。「社会に出てからは自分でアレルギー食品を選択できる力をつけることも必要ですから、家庭でもアレルギー食品に一切触れないというのではなく、話す場をもってもらうよう働きかけています」(田米開さん)。
江東区の給食は全校自校方式で、すべて手作りがモットー。調理員全員と毎日話し合いをする場を設け、共通理解のもとで最善の調理が行われているという。
023アレルギー食に理解
子ども同士で協力も
アレルギーによる代替食や除去食を食べていることで、いじめに会うのではないかと心配する親も少なくない。同校では、担任だけでなくクラスの子どもたち全員に対しアレルギー対応食について事前指導を行っているので、特別に差別の目で見たり、いじめなどは全くなく、返ってアレルギー食について理解が図られ子どもたち同士でも協力体制がとられている。
「アレルギーのせいで食べものに対する興味を失うことのないよう、できる限りの対応をしていきたい」とアレルギー対応食に取り組んで15年余りになるというベテランの田米開さんは話してくれた。
◎C長野県
長野県松本市内の小学校21校分1万2000食を提供している松本市西部学校給食センターでは、昨年度の調理場全面改築にあわせてアレルギー専用調理室を設置。さらに一般給食担当の学校栄養職員3名のほかにアレルギー担当学校栄養職員が特別に2名配置されており、徹底したアレルギー対策が図られている。一方、中学校12校分5500食を提供している第2学校給食センターでも4名の生徒に対し、アレルギー対応の献立作成が行われている。
平成10年に市内の小中学生を対象にアレルギー調査をしたところ、1万7500人中約400人が何らかの食物アレルギー疾患を持っていることが判明し、翌年1月より本格的に対応を開始した。開始当初は除去食と代替食でスタートし、現在は一人ひとりの症状に見合った対応を行っている。今年度は30人の児童が対象。
同センターでは毎日3パターンの給食を作っており、一般給食の献立を基本としてアレルギー食も3パターン用意している。調味料以外は当日使用する食材から選定。献立で除去すべき食材を取り除き、食べられる食材を対応食として取り入れている。調理は独立したアレルギー専用調理室で一般給食とは別に行われ、アレルギー担当学校栄養職員のほかに調理員2名が交代で対応している。学校への配送の際には、保温器を別にして対応食カードを添えるなどの配慮が行われている。アレルギー原因食品では、やはり卵が最も多く30名中21名。練り製品などの加工食品に関しては、製品にもよるが除去するケースが多い。
家庭との連携については、1か月分の献立表と材料の配合表をまとめて送り、確認後承諾書を提出してもらうという徹底ぶり。修正等がある場合は、再度承認をとる。情報交換会も定期的に行われ、必要があれば随時個別相談に応じている。「食物アレルギーといっても子どもによって食品や症状など様々ですから親との連絡を密にとり、それぞれの子どもに対応しています」とアレルギー担当学校栄養職員は話す。季節や体調によっても微妙に症状が異なるので、そのつど親との連絡は欠かさないという。
「施設面でも、家庭や学校との連携の面でも体制が整っており、現段階では十分な対応が図れていると思います」(アレルギー担当学校栄養職員)。今後の課題としては、「子どものアレルギー食品が複雑化してきていることを感じます。わかりにくいアレルギーをもっている子どもも増えている。アレルギー対応食について常に最新の情報を得て勉強をしていかないといけない」と常に危機感を持ち対応にあたっていると話してくれた。
(2002年10月12日号より)
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