家庭科教育研究大会(報告)

 小学校、中学校、高等学校の家庭科教諭が一堂に会し、研究協議を深める唯一の全国大会「第53回全国家庭科教育協会研究大会」が、3月27日から29日まで都内で開かれた。1日目、2日目は帝京短期大学で研究発表、協議、講演会などが行われ、3日目は環境エネルギー館、昭和館などで講習、見学会が行われた。


 1日目に行われた研究発表は、「食生活の自立を目指した実践的、体験的学習の指導の取り組み」をテーマに、秋田県内の小学校、中学校、高等学校が発表。各発達段階に応じた具体的な授業実践が報告された。

■小学校の実践
 男鹿市立船川第一小学校は、子どもたちが自分の家庭で聞いた「おすすめの一品」を教材とし、それぞれの料理に使われている材料や栄養分類などを調べた。さらに家庭から寄せられた料理の写真をもとにカードを作成し、カードに書かれた情報をもとにおすすめの一品料理を組み合わせ1食分の献立作成に取り組んだ。
 献立作成も1回限りでなく、「自分で食べたいベスト給食」「自分のためのご飯プラン」「家族のためのおすすめご飯プラン」と3段階で取り組み、最終的に家族のことを考え栄養バランスのとれた料理を組み合わせていくことができた。作成した献立は各家庭で実践へとつなげていった。

■中学校の実践
 男鹿市立男鹿東中学校は、献立作成と調理実習の一体化を図った取り組みを実践。郷土料理を取り入れた献立の調理実習には、地域の人をゲストティーチャーとして招き、昔の料理の知恵や工夫を学ぶ。
 実際に食べる量を把握する学習としては、1回に摂取する食品の重さをゲーム的な活動を通して展開。卵の重さを基本として、他の食材についても量的な感覚を身に付けることができるようになった。さらにその日の給食に使われている1人分の材料を提示し、材料の工夫やたくさんの食品が使われていることも改めて理解することができたという。

■高等学校の実践
 県立能代北高等学校は、健康な食生活を営む、日本型食生活を見直すという2つの観点から授業を8段階に設定した。和・洋・中それぞれの調理実習や献立作成、家庭の料理調べなど各段階での実践を経て、最終段階では家庭への実践のほか、一人暮らしの高齢者宅を訪問し高齢者に喜んでもらえる昼食作りなどに取り組んだ。

■質疑・講評
 発表後の講評で、水野香代子国立教育政策研究所教育課程調査官は小学校での実践について触れ、「これまで食物領域では栄養素など知識の覚えこみになりがちだったが、小学校の場合、調和の取れた食事ができるよう目に見える食品を通して実践的、体験的な活動を重視してほしい。そこから自分と家族との関わりを見直すことが大切である」と述べた。続いて河野公子文部科学省初等中等教育局視学官は、食に関する指導については小、中、高校でどう系統的に学ばせていくかということが課題であるとした。「小学校では具体的な食品について学び、そして中学校で栄養素、さらに量的な把握もできる能力を身に付けることが求められています。また学校でしかできない家庭科教育について見直し、家庭での実践に繋げられるよう取り組んでほしい」と述べた。
 発表後に行われた協議では、学校栄養職員との連携の取り方について質問が多く寄せられたが、その点について水野氏は「授業にはいろいろなパターンがあってよいと思います。その中の一つとして栄養の専門性をもった学校栄養職員の指導も組み込むといったようにそれぞれの学校で創意工夫してほしい」と述べた。また、河野氏は「家庭科教諭による指導計画のもとティーム・ティーチングなどの形で、学校栄養職員と連携することが望ましい。その際、どの程度協力してもらうか家庭科教諭が示すことが大切である」とした。




(2002年4月27日号より)