養護教諭の複数配置 理想は子ども400人につき1人 さらなる定数拡大へ
保健室におけるけがや病気の対応、健康診断などの保健管理、健康相談活動、保健室登校児への対応など養護教諭の職務は限りない。
多くの学校で養護教諭が授業へ参画するようになったが、養護教諭が授業へ出ている場合の保健室の対応はどうするかといった課題もある。以前、兼職発令を受けて授業へ積極的に関わっているという養護教諭の取材を行った時、「授業に出る際は、他の先生が保健室を訪れる子どもの対応をしてくださったり、校内体制をしっかりと確立させてから行っていますが、そう多くの授業へ出れないのが現状です」という話を聞いた。
このような状況を受け、平成3年の第6次定数改善より養護教諭の複数配置が実現し、さらに平成12年の第7時配置改善計画で、児童数が851人以上の小学校、生徒数が801人以上の中学校、高等学校、61人以上の特殊教育諸学校には養護教諭の複数配置が行われている。小学校について言えば、851人に付き1人の養護教諭が配置されているということである。今回の改定により、特に高等学校では複数配置校が大幅に増加しているとのこと。
今年度、東京都では小学校2校、高等学校3校、特殊教育諸学校31校で養護教諭が複数配置されている。児童数が1000人を超え、今年度から2人の養護教諭が配置されている江戸川区立第2葛西小学校では、2人体制になったことで健康相談活動など保健室での対応がスムーズに行えるようになり、子ども一人ひとりに時間をかけて対応することができるようになったという。また養護教諭が授業へ参画する機会も増えるようになった。来年度から新設校の設立によって児童が分散化するため、今年度かぎりとのことだが、「複数配置によって、養護教諭の果たす役割の幅も広がりました」と同校教頭は話す。
全国養護教諭連絡協議会が平成10年に養護教諭、学校長を対象に実施した調査の中で、「養護教諭の複数配置の基準として望ましい学級数、人数」について聞いた設問では、学級数で「7〜12学級」(学校長44・0%、養護教諭36・2%)、人数では「400人〜599人」(同33・5%、同40・9%)との回答が最も多いという結果がでている。
「複数配置への期待」について、学校長は「救急体制等への安心」を第一にあげており、養護教諭は「一人一人にゆとりをもった対応」をあげている。また複数配置された場合「保健学習や保健指導など養護教諭による直接指導」についても学校長(42・9%)が望んでおり、養護教諭(38・5%)より高い比率であった。養護教諭が掲げる期待として「健康相談活動の充実」(49・7%)、「互いに相談・研賛し、資質を高めあう」(42・9%)が多かった。
第8次、第9次の改善計画へ向け
「保健室への1日の来室人数が増加し、内容もけがや病気だけでなく心の病を抱えた子どもたちなど量・質ともに変化し一人の養護教諭では対応しきれないことが多くなっています。また養護教諭が健康教育へ積極的に関わるためにも更なる定数改善を進めていきたいと思います」(田嶋八千代文部科学省健康調査官)。
第8次、第9次の改善計画へ向けてさらに基準値を下げ定数の拡大を図る動きにあるとのこと。
複数配置について 京都市立第四錦林小 養護教諭 久保 昌子
前任校は全国に先がけて昭和36年頃から養護教諭が複数配置され、児童数が減少した現在も複数配置が継続されています。今年度から新しい小学校に異動し一人で勤務していますが、昨年度までをふりかえり、複数配置について思っていることを記してみます。
複数配置の最大のよさは、「執務の全てにわたって話し合える人がいること」だと思います。具体的な事柄を紹介しましょう。
まず、児童との対応ですが、個別の対応が必要な児童に対して、『主に児童に対応する』役割と『その対応や児童の変容を客観的に判断する』役割を二人の養護教諭で分担することができます。子どもたちが下校した後の保健室で、今後の対応について毎日のように話し合っていたことを思い出します。今思えば、毎日が事例研究会であったような気がします。日々の来室時の対応でも、一人一人の児童に丁寧に対応することができ、処置の判断をする際には複数配置の有難さを感じました。
保健指導では、途中で救急処置に手を煩わされることなく、指導に集中することができました。指導前は教材研究を、指導後にはミニ研究会を持ち、次回の指導に生かせるように心がけていました。保健管理においてはコンピュータを活用し、有効な活用方法を常に模索していたように思います。健診結果をはじめとするさまざまなデータを多角的な視点から分析できるようになりました。
さまざまな研修会に参加した際には、自校に生かせることがないかという視点で話し合っていたように思います。同様に、校内研修会・研究授業でも、養護教諭としての意見や感想を出し合うことで、学んだことを深められたように思います。複数配置であることで、保健室が学校保健の取組の中核として校内で認識され、具体的な実践に発展させていくことも容易であったように感じます。
複数配置が力を発揮するために、「どのような子どもの姿をめざして保健室経営をしていくのか」を話し合っておく必要があるでしょう。また、児童の様子、研修会で学んだこと、その他、気づいたことについて前向きな意見を言い合える人間関係を築いていきたいものです。一人の力には限りがあります。しかし、2人になれば、互いの個性や知恵から多くのことを学び合えます。謙虚に学び合うことによって、視野が広がっていくのが何よりの収穫であったとしみじみ思います。
「こなすべき仕事が多いから複数配置にすれば、楽になるだろう」という養護教諭の側の都合ではなく、「一人一人の子どもを伸ばすために、保健室でどのような取組みができるだろうか」という子どもの側にたった複数配置でありたいと思います。
(2002年2月9日号より)
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