児童・生徒の問題行動にサポートチームで対応
  
具体的マニュアル示し 事例のデータベース化も


 文部省(当時)は、平成9年5月に神戸で起こった「小学生連続殺傷事件」の際にも、同様の研究会議を設置して検討。翌年「学校は『抱え込み意識』を捨てて関係機関と連携」するよう求めたが、今回の基本的な考え方や方向性もこれとほぼ同様。平成10年の提言の中から、確実に実行するべき事柄として1校長のリーダーシップの下、全教職員が協力して指導に当たる体制をつくる2問題行動に対する教職員の認識や対応を十分なものとする3学校と関係機関との連携の在り方を十分検討し改善する4教委による学校への支援を十分に行う−−といった骨子を示した。
 さらにこれらを踏まえた上で、具体的な対応方策として▽心の問題への対応▽児童・生徒の社会性を育む教育の展開▽学校と家庭や地域社会、関係機関とをつなぐ「行動連携」のシステムづくり▽学校や教委における問題行動への対応に関する自己点検・自己評価の実施−−という『4本柱』を示し提言している。
 今回の報告のポイントとなっているのが、「学校と家庭や地域社会、関係機関とをつなぐ『行動連携』のシステムづくり」。基本的な考え方については全会の報告同様「学校や教委、地域住民、関係機関などが連携して対応すること」となっているが、さらに具体的に踏み込み1問題行動が発生したり、その前兆が把握された場合には、ネットワークの関係職員で構成する「サポートチーム」を組織し、学校や家庭への支援、児童・生徒への対応を行う2ネットワーク内の各機関の役割分担や連携方法などを具体的に定めたマニュアルを作成する3関係機関による合同の事例研究など、日頃の連携を進める−−といった体制整備のあり方について言及している。

 また今回の報告では2のマニュアルづくりの参考資料にしてもらおうとの狙いを込め、「学校、教育委員会における関係機関との連携マニュアル」も示している。これは「問題行動が発生した場合」と「問題行動の前兆が見られる場合(試案)」の2通り。
 例えば「問題行動が発生した場合」では、学校と教委、関係機関の3者について対応や連携のモデルを時系列で提示。関係機関としては警察、児童相談所、精神保健福祉センター、保健所、病院等医療機関、少年鑑別所、家庭裁判所、保護観察所、保護司などをあげながら、「学校」では「現場での対応・指導」→「校長への報告、校長の指揮、保護者との連絡」→「プロジェクトチームの編成と緊急対応」→「マスコミ対応(以下は随時)」→「緊急職員会議、校長からの指示」→「加害、被害児童・生徒への指導、援助、保護者への指導、援助、PTAと学校の連携」→「学級、学年、全校児童・生徒への指導」→「保護者会、PTAの会合などの開催」→「プロジェクトチームでの協議(方針、体制など)、校長からの指示」→「職員会議、生徒指導部会などの開催、校長からの指示」→「加害、被害児童・生徒への継続的な指導、援助など」−−といった流れで対処することを明示。同時に教委や関係機関との間で連絡、相談、助言、職員の派遣などを行うことも示し、さらには学校と関係機関などの連携事例として山形県、大阪府、広島市、郡山市(福島県)など14事例について紹介している。
 報告ではこうした連携活動について、全国の事例をできるだけ多く調査。実態や課題を明らかにすると同時に、連携活動の情報をデータベース化し、情報通信ネットワークを通じて全国に提供することも求めている。

(2001年5月12日号より)