第51回 全国学校保健大会特集

大会発表校の実践

学習カードで健康チェック
埼玉・児玉小
自分の体に意識もたせ
 群馬との県境にほど近い場所に位置している埼玉県児玉町立児玉小学校(金子一男校長・児童数526人)。同校の茂木智孝教諭は、中学年における保健学習の取り組みについて一昨年度から2年間にわたり実践を進め、昨年度は同県の「小学校保健学習のしおり」の作成委員をつとめながら実践を行った。大会では、こうした実践を通して中学年における保健学習の指導のあり方を発表する。
 「中学年の児童に保健を教える場合、高学年の児童と違って、教えている内容が自分に結びつくものだと捉えさせていかないと、なかなか興味を示してくれません。そこで学習カードなどを使って、運動や休養など自分がどれだけ健康に良いことを行っているかをチェックさせました。教えている内容を、自分に関わりがあることだと意識させながら、学習を進めるようにしました」と茂木先生は語る。
 保健学習の時間は、昨年度まで3年生4時間、4年生4時間というカリキュラムで、茂木先生が中心となり実践を進めてきた。そして、今年度からは本格的に90時間体制に移行し、3年生の段階から各担任の先生が指導する形になった。
 さらに、3年生の「学校での保健活動を調べる」という単元では、養護教諭に協力してもらい、学校での養護教諭の活動などについて説明を行った。5年生でも、けがの防止を教える際には養護教諭から応急処置の仕方について教えてもらうことになっている。
 「このような実践的な問題は、担任が教科書を見ながら教えるのと、現場の知識を持っている養護教諭が教えるのとでは、子どもたちの受け止め方も違ってきます」
 また6年生の総合的な学習の時間では、「健康に生きよう」という単元で、健康というキーワードからイメージしたことについて、「病気を治すためにはどうすれば良いのか」や、「体に良い野菜の料理の仕方」など、幅広い内容にわたり各自が興味を持ったことについて調べ学習を進めていく。昨年度は、自分たちが決めたテーマにそって、子どもたちは学校医の先生に質問に行ったり、地元のお茶屋さんからお茶の成分について聞いてまわるなどしながら、体に良いことを調べ上げて発表を行った。
 保健学習を指導する際に注意すべきことについて「体育が好きな子どもが多いので、その体育の時間が教室での保健学習の時間になった時に、子どもが保健学習を嫌いにならないように配慮する必要があります」と茂木先生。
 「できるだけ子どもたちが保健を好きになるように、先生が一方的に教える授業にならないように気をつけなければいけません。子どもたちに自分の体について意識を持たせ、健康な体作りに興味を持たせることができる保健学習を進めていければと思っています」と、これからの保健学習のあり方を考えている。

全校でストレス解消
千葉・佐原五中
保健室は個別の指導を

 現在、多くの学校で保健室の来室状況は増加傾向にあり、特に中学校になると友達関係の悩みや勉強への不安など心の問題を抱えて訪れる生徒も多い。千葉県佐原市立第五中学校では、ストレス解消法をテーマにライフスキルやカウンセリングを取り入れた学習活動を展開している。
 今年5月、全校一斉に「ストレス解消法」をテーマにした授業を学級活動の時間を使って実施。養護教諭の小林芳枝先生が中心となってカリキュラムを作成し、それをもとに各担任によって授業が行われた。授業を行うにあたり「何にストレスを感じているか」事前に調査。クラスごとにデータを集計し、各クラス実態に合わせた授業を展開した。
 全校で見ると、「勉強・成績」「人間関係」にストレスや不安を感じている生徒が多いという結に生まれたようです」と小林先生。授業の導入部に、調査の結果から実態に触れることでより実践的指導につながっていったという。授業では自分のクラスの実態や自分自身の生活について振り返り、ストレス解消法についてブレインストーミングを行った。
 さらに「ストレスと心の健康」をテーマに全校参加の公開学校保健委員会を実施。保健委員会の生徒たちが中心となり全校調査の結果を公表し、ストレスを解消するためのプラス思考の考え方や、良い睡眠のとり方、リラクゼーションの仕方など校医から専門的なアドバイスを受けた。
 授業の前後で、生活に変化があったかを尋ねると9割近い生徒が「考え方がかわった」「睡眠をよくとるようになった」「ストレス解消法の実践」をあげるものが多かったとのこと。気分温度計で自分の睡眠不足に気付いたり、睡眠不足の改善をしようという態度の形成につながっていったという。
 また授業という集団的な指導を行うことにより問題を抱えている子どもを早期発見し、そういった子どもへは保健室等で再度個別の指導などを行うなどした。「気分温度計やワークシートを通して、気になった子に声をかけるなどしています」(小林先生)。
 何か心の問題が起きてから問題の解決に取り組む「対処療法的」な心の健康教育から、積極的な心の健康教育へと転換を図っていきたい」と小林先生はこれからもこの実践を充実させていきたいと話してくれた。






(2001年11月10日号より)