イギリスのコンピューター教育事情


報告 渋谷教育学園幕張高等学校・笹川清喜教諭

 イギリスでのコンピュータの事情を視察するために、WYS教育交流財団の特別な取り計らいにより4校(公立)を訪問することができた。それぞれの学校は、year7(11−12歳)、year8(12−13歳)、year9(14−15歳)、year10(14−15歳)、year11(15−16歳)、year12(16−17歳)、year13(17−18歳)の一貫教育をしている(つまり、11歳から18歳までの生徒がいる)。設備等の面では日本に劣る面を持つ学校があるが、それぞれに言えることは、道具としてのコンピュータ利用が浸透していることになる。

1 Tunbridge Wells Girls
 Grammar School(女子校)


↓被服室にある設計用のコンピュータ
 見学した授業は、12歳から13歳の授業で週2回おこなわれるDTPの授業である。特に、指導することもなく自主的に課題制作に取り組んでいた。他の課題として制作されていた、コンピュータで作成した作品には、のりなどでさらに飾りをつけカードをつけるおもしろいアイディアのものも見ることができた。道具としての利用がうまい。コンピュータルームは、2室あり、一方は授業、一方は宿題(16−18歳)のために使用していた。宿題のために使用していた部屋では、DATA処理で相関のグラフをエクセルで作っていた。中央に教官室があり(そこにサーバーがある)、ドアを通して2つの部屋を行き来することができる。1人の先生が2つの部屋の面倒を見てたが、特に、注意する必要もない。両方とも室内LANが組まれており(校内LANは未整備)、OSはWINDOWS95で、プリンタはカラー1台、レーザー白黒1台。インターネットは接続されているものはないが、環境を最大限に利用している。今年の、6月には、インターネットに接続される。休み時間、放課後など使用は自由である。
 コンピュータ室以外に被服室、図書室などいたるところにコンピュータが置かれており頻繁に利用されている。


2 The Judd Scholl(男子校)

↓フランス語の授業
 見学したのは、フランス語の授業、美術の授業である。まず、16歳から17歳のフランス語の授業がコンピュータ室を利用しておこなわれていた。コンピュータ室のレイアウトが目を引く。中央に黒板と机いすがあり、教室の周囲の壁に向かってコンピュータが設置されている。生徒はそれぞれ課題に取り組んでいたが、教師の説明が始まると中央のいすに座りなおし、説明を聞く。説明が終わると中央の席を離れコンピュータのいすにに向かうのである。作業を中断させ、説明に集中させる配慮が実にうまい。2人に1台の環境であるが道具としてのコンピュータの使用が強く感じられる。室内LANが組まれている。OSはWINDOWS3・1。
 このコンピュータ室の中に、別の空間があり、他の授業でコンピュータを必要とする生徒が使用できる配慮もなされており、他の授業を受けている生徒が利用していた。インターネットに接続されているのは1台のみであるが、情報検索をしている生徒もいた。もちろん、休み時間、放課後などすべて使用は自由である。

 また、美術室における美術の授業でも、生徒の課題の達成のために置かれたコンピュータが1台あり、そのコンピュータとデジタルカメラを利用して課題に取り組んでいた。
 他に、コンピュータをデータ処理のために使用する小部屋も別の棟にあり、そこでは、数人の生徒が表計算ソフトを使用していた。また、図書室では、CD−ROMで検索できる体制が確立されて、理科室等さまざまな場所にコンピュータがある。コンピュータ室から別の棟には、LANが引かれているようだった。

3 Hugh Chrisite tecnology collage(共学)

↓DTPの授業中
 この学校は、この地域で一番コンピュータの環境が充実している学校である。collageとなっているが、他の学校同様の年齢層の生徒がいる学校で、校内LANが整備されている。
 LLの授業を見学したが、2人の先生がティームティーチングで教えていた。一方、それぞれがソフトを選び課題に取り組んでいたDTPの授業(12歳から13歳)では、教師は一人。授業による教師の配慮が伺える。

 他の授業で使うテキストをいただいたが市販のものと自作のものをうまく使い運営している。
 構内を見学させてもらったが、鍵のかかっている部屋もずいぶんあると感じた。進んだ学校だと、いくつものコンピュータ室があり、開放する部屋をきめて自由に使わせている。いろいろの用途に使い分けるだけの部屋とコンピュータがあるのはうらやましい。インフォメーションは、廊下などいたるところにあるディスプレイに映し出されていた。
 インターネットに関して、著作権についての指導はどう思うか聞いて見たが、答えに困っていた。最後はやはりモラルに任せることになるそうだ。

4 Tonbridge Grammar School For Girls(女子校)

↓i−MACを使用してのインターネット
 昼休みであるが、見学した2室のコンピュータ室には、生徒が来ていた。特に、先生がいるわけでもなく自由に使用できる環境にある。特に、1室は、30台ほどがすべて新製品のi−MACであり、インターネットに接続できる環境にある。昼休みなのに、多くの生徒が利用中であり、自由な環境である。また、理科室等にもコンピュータの設置されていたが、ここは鍵がかかっており使用できない。

(教育家庭新聞99年5月1日号)