BBC(ロンドン) デジタル教育サービス

全てのレベルのすべての教科用リソース供給を目指す


 今年8月のロンドン訪問中にデジタル教育サービスを学ぶためにBBCに訪れた日本の派遣団に同行した。
 BBCはロンドンの幾箇所にも分布している。ロンドン西部のホワイトシティには、巨大なテレビ制作設備に加えて教育課がある。
 約4年前、従来のテレビとラジオ番組に加えて、Web上のオンライン・デジタル・コンテントをプロデュースするBBC教育を開始させた。最近の(BBC−EDU)のウェブサイトには20万のウェブページがあり、テーマ、年齢グループ、生徒、教師、成人の学習者向きリソースにあわせてアクセスする事が可能だ。特徴の一つはBBitesizeCにおける試験検査のためのオンライン・リビジョン・ユニットすなわちBitesize・チャンクの学習ユニットである。

 英国の学校のほとんどは、そんなに速いインターネット接続ができず、文字や画像、動画、リアルオーディオのファイルは28kbpsで使用可能なように工夫されている。
 BBCはヨーロッパで最大の教育のウェブサイトをもっていると聞いた。それは世界中から自由にアクセスする事が可能で、5つのパラレルサーバー(うち1つはニューヨーク)がすばやいアクセスを手助けしている。
 BBCは情報提供、エンターテイメント、教育を役割と見なし、ウェブを人々が気軽で安価に利用できる、大切な方法の一つと考えている。学校の教科書に比べ、オンラインのコンテントは安価で、融通が利き、最新かつ24時間手に入れることができるため、教師はこのサービスをとても気に入っている。
 彼らは融通のきく大量の情報と、国のカリキュラムに合わせたパッケージ型の両方を探している。そして、BBC教育はそのどちらも供給している。

 ほとんどの内容は、BBCの社内の調査員が様々なリソースを執筆者に提供し、教師ら自身によって書かれたものだ。近年では約千人(70万人中)の教師が協力しており、BBCはさらに人数を増やそうと試みている。教師達には報酬が支払われず、著作権はBBCにいってしまう。だから、ラジオ、テレビ・プロダクションと同様、BBCは少なくとも英国において無料でそのコンテントを提供しなければならない。
 つぎのステップで、将来的には学校に、よりすぐれたバンド幅が供給されるであろう。そのため、いまマルチメディア教育コンテントを確立させる新たな可能性がでてきた。こういった意味でもBBCは先駆者である。近年BBC教育は広帯域テストサイト(512Kbpsから2Mbpsライン用)を実施し、いまのところパスワードは秘密で被験者の教師にのみ使用されている。一年以内には一般に公開される見込みだ。
 訪問したとき私達に、ブラジルに関する地理の学習ユニットが公開された。画像、ブラジルや近隣国の音楽を交えたマルチメディア・クイズでウォーミングアップが始まった。
 すべてのユニットにおいて教材は異なった学習情報(原文、視聴覚、運動感覚など)によって工夫されていて、障害者に対しても字幕や手話をビデオに加えるなどの工夫がされている。
 一つのユニットで、どのような異なったアプローチがとられても、共通の学習結果が得られる。例えば、ブラジルがどこに位置するかを理解するというようなことだ。
 また、教師はリソースに自分たちのテキストを加えることにより教材を調節することができる。だから、教材は異なった単語力、外国語に応じて修正することができる。
 B現実Cのビデオシリーズにリンクしている3Dのバーチャル世界は教材への導入、相互作用を可能にしている。

 ゆくゆくは、BBCは英国のカリキュラムに沿って、全てのレベルのすべての教科用のリソースを供給するつもりだ。テレビとウェブを統合して、将来的には全て広域接続(DSL、ケーブル、サテライト・ダウンロード)を介しての供給を目指している。
 オンライン・システムは一千万人分のログイン・ネームとユーザー・スペースをまかなうことができる。そのため、英国の子どもは全員アカウントをもつことができる。学習活動に関するログ・ファイルは教師がアクセスできるようになるだろう。

 BBC教育の需要は急激にのびている。来年度の社内の再編成過程中に、現在の100人のスタッフを倍にするつもりだ。
 BBCニュース、BBCワールドサービスといったBBCの他のサイトとも連携して、BBC教育は英国の学校用のみに限らず、多種多様で価値あるリソースの提供を呼びかけている。



(2000年10月7日号より)