ヨーロッパ教育分野におけるIT環境(英国政府)

                IT普及により世界経済での競争力を強化
 
 プラビン・ジェスワ氏(教育雇用省全国学習網課EU国際チーム国際政策官)により、英国日本大使館で以下のプレゼンテーションが行われた。

 情報通信技術を援用して展開する全国学習網(NGfL)を設立した英国政府の目的は、このプロジェクトが教育現場と科学技術の仲介役を果たすことにある。ヨーロッパ全体で情報通信機器の普及が進んでいくなかで、学校・図書館・博物館・美術館などの教育機関・学習施設とITを結びつけ、あらゆる学習者がITをベースに学習できる環境を整備している。ハード面の整備だけではなく、それを利用する人材の育成も重要である。
 そのために、小学校から大学までの教員が全員IT機器を援用して授業・研究を行なえるように各地で研修事業を展開している。教員のためのIT研修事業に、政府は2億3千ポンドを支出している。教育機関にITを導入し、教員や学習者が自信を持ってコンピュータに接することができる、つまり情報処理やコミュニケーションの手段として満足に活用できるコンピュータリテラシーを習得することを目標としている。学校で先生・生徒が使用する教育用ソフトウェアの開発は、主に民間企業が行なっている。

 ヨーロッパではこのような教育目的のITの普及は、EUの定めたガイドラインに沿って進められている。ガイドラインのかかげる教育分野でのIT利用の目的は、世界経済での競争力を強化し、そして知識を基盤とする社会を構築して社会経済的な進歩を目指すことにある。一方でガイドラインでは、社会全体のボトムアップ、貧富の差を解消することを考慮に入れている。失業者や低所得者を含むすべての国民がIT機器に接する機会を与えられ、自己啓発や個々の学習・職業訓練に利用できるようにするのも政策の一つである。英国政府は、学校と公民館にパソコンやプリンターなどのIT機器を設置するために、来年度17億ポンドを支出する計画である。

 ITを基盤とした学習として、ほとんどの学校が日本語教育を導入する方向にある。日本語は、経済大国日本との関係を強化し、ビジネス機会を増やす上で重要な言語であると認識されている。フランス政府は、特定の語学学校だけではなく一般の学校にも日本語教育を導入できるかどうか、その実現可能性と学習効果について現在調査中である。日本語教育の普及は、イギリス・フランスのみならずヨーロッパ全土で見られる動きである。

(2000年10月7日号より)