通信について深い文化
ダウンタウンをハイテク村に
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カナダ・ハイテク・シンポジウム「グローバル・コマース時代のソリューション−コンピュータ・メディア・通信の融合」が、5月15日(月)、東京・港区赤坂のカナダ大使館にて開催された。シンポジウムは、カナダのマスコミ、政府、民間企業からIT産業の第一人者による講演が行われ、それに続いてカナダ企業による自社紹介、商品展示会と商談会が開かれた。シンポジウム会場は、IT関連企業、商社、金融、マスコミなどの日本企業参加者によって午後1時の開始時間と同時に満員となった。このことからカナダのIT関連企業に対する日本企業の関心の高さがうかがえた。
講演の席には、マスコミ業界のタイラー・ハミルトン氏が始めについた。同氏は、テレコム、Eコマース、インターネット・セキュリティに関する専門家で、現在はカナダのテレコムとネットワーク産業界を対象として1998年に創刊した「コミュニケーション&ネットワーキング・ジャーナル」の編集に従事するほか、カナダ最大の日刊全国紙「グローブ・アンド・メール」経済欄のテクノロジー担当記者、ROBTVなどのラジオ局解説者として活躍している。
グラハム・ベルの国
カナダは、G7の中ではアメリカに次いでインターネット普及率が高い。全人口の56%(1250万人)がインターネットに接続している。一般家庭での普及率は35・9%。学校は全校がインターネットにアクセスしている。ハミルトン氏は、このような高いインターネット接続率を支える要因として、通信にかかわるカナダ独自の文化とハードの両面から分析する。カナダは通信技術の歴史が古く、グラハム・ベルが1874年にカナダで電話を発明(アメリカで特許取得)、1876年には長距離電話網が敷設されている。カナダ国民は広大な国土に分散する住宅・オフィスを連絡する手段として古くから電話を中心とする通信技術に高い関心と必要性を抱いており、インターネットに対する反応は非常に迅速であった。このような通信の歴史と国民性が土壌にある上、通話料はG7で最も安く、デジタルケーブルを利用した場合の通信使用料は月当たり40カナダドル(約2800円)である。
さらに、同氏はEコマースに関するカナダの現状について説明した。カナダ国内企業の5分の1がEコマースに携わっているが、その多くはマーケティングによる。カナダはアメリカに比べて個人投資家が弱いため、ベンチャーキャピタルの増額が望まれている。ボストン・コンサルティング・グループによると、現在のベンチャーキャピタルは年総額280億ドルであるが、2003年までには1550億ドルの投資増加が予想されている。Eコマースの個人消費者は、1999年で全家庭のうちの9%がオンラインショッピングを行っている(アメリカは23%)。一方で、オンラインショッピング利用者のうち8割の人が、商品受け渡しやカード番号の漏えいなどで失敗を経験している。口座取引のオンラインサービスは銀行のみならず郵便局でも整備されており、税金の支払いなどで利用されている。
北のシリコンバレー
「北のシリコンバレー」と呼ばれるオタワ州では、ダウンタウンをハイテク村として再開発している。進出企業は地元の大学に出資し、優秀な人材の育成に貢献している。政府は、外資誘致を目的として、同地への進出企業に対しては法人税を15・5%から8%に引き下げ、事業開始年は従業員に対して10万ドルまで所得税を免除している。ハミルトン氏は、カナダにおける今後のEコマースの課題として、ベンチャーキャピタルの成長、規制緩和、インターネットセキュリティーに対する信頼の向上などをあげた。
80%の家庭に光ファイバー
2人目の講演者、デビッド・ボストウィック氏は、8年以上にわたる日本での勤務経験がある。カナダ貿易促進協会の東日本担当プロジェクトマネージャー、在日カナダ大使館商務部二等書記官を歴任し、現在はカナダ外務・貿易省日本課でカナダIT産業の調査・分析と日本市場参入促進を担当している。ボストウィック氏によると、80%の家庭に光ファイバーケーブル網が張り巡らされているカナダでは、商取引のみならず医療や教育の分野でもWANが利用されている。全国医療システムは、都市部から離れて自宅で療養する心臓病患者の脈拍数を都市部の病院に送信し、医者が遠隔にいる患者を診察することが可能となった。また、住民が分散して住み、家庭から学校へのアクセスが悪いニューファウンドランド州では、テレビ会議やインターネットを通じた通信教育を行っており、生徒はわざわざ遠く離れた学校に通学することなく、学校から近所の公民館や図書館に配信される講義を視聴すればよい。
さらに、同氏はケーブルテレビ網を利用した新しい試みとして、テレビ番組をオンラインサービスで結ぶインタラクティブ・テレビを紹介した。“DishItOut”という料理番組は、テレビとインターネットが統合され、番組の配信者と視聴者が双方向に結ばれる。これによって、視聴者は番組で紹介される料理のレシピをダウンロードしたり、オンラインショッピングを楽しむことができる。
K12向けソフト
第2部ではシンポジウムに参加したカナダの企業24社が自社紹介を行った。参加企業の業種は、リスク管理・グラフィック・暗号化・データベースなどのソフトウェア開発、オンライン取引サービス・物流・ローカライゼイション・ネットワーク接続などのソリューション、IT関連機器設計・製造、金融、通信、教育など多岐にわたった。そのうち、教育ソフトを開発するTechnokids社(www.technokids.com)は、児童向け情報技術カリキュラム「K−12」を紹介した。「K−12」は、コンピュータ技能の習得と教科の教育の融合を目指して教師が制作に参加した。ソフトには60以上の課題プロジェクトが含まれる。プロジェクトの例として紹介されたテクノコップというプロジェクトでは、指名手配の写真を犯人の顔特徴から画像ソフトで作成し、犯人情報をデータベースソフトで管理する。また、テクノビジネスでは、表計算ソフトを使って財務諸表の作成方法を学んだり、ワープロソフトでビジネス文書を作成する。ビジネスの課題プロジェクトを遂行することで経営についても学習することができる。「K−12」は、カナダ政府のコンピュータ技能教育ガイドラインの条件を上回り、販売先はカナダ国内のみならず、アメリカを含む13か国で使用されている。
(教育家庭新聞2000年6月3日号)
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