「社会で求められる英語力〜TOEICテストを通じて〜」――NEW EDUCATION EXPO2011で6月3日、現在・今後の企業、社会で求められる英語力とその獲得方法について報告と意見交換が行われた。
財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会の調査によると、企業が新入社員に対して求める英語力・TOEICスコアは平均547点、
海外赴任時に求められる基準が平均675点だ。一方、大学4年生の平均は506点で、企業が期待する英語力より低くなっている。国別比較でも公開テストのスコアで日本は韓国より約40点低い。英語教育方法の改善が求められるところだが、同協会広報・渉外課の北村直子氏は調査結果を紹介し、またTOEICテストのメリットとして目標や受験機会の設定がしやすいことを挙げる。
昨年、楽天社長・三木谷浩史氏が「英語の社内公用語化」を発表し、脚光を浴びた。社会から突出しているかに見えたその取り組みもその後相次いで打ち出された大手企業のグローバル採用枠の拡大などにより徐々に日常化しつつあるように見える。同社人事部Globalization推進課長の葛城崇氏はその背景の1つとしてゴールドマン・サックス調査のある数字を紹介する。現在GDP世界第3位の日本は少子化、続く経済の低迷により2050年にインド、ブラジル、ロシアに抜かれ第6位に転落する。一人当たりGDPでは韓国が世界第3位に躍進し、日本はそれより約2万ドル低くなる。
インターネット関連企業で「世界一」の売上を目指す楽天の現在の売上高は世界9位。躍進のために@優秀な人材の獲得、A情報共有・意思決定の迅速化、B海外の情報収集、が必要だという。そこで登場するのが言葉の壁をなくす、「英語疑似体験の場を作る」ことだ。楽天は2012年7月から社内文書、ミィーティング、コミュニケーション(電子メール、メッセンジャー)の社内公用語を英語化する。
現在は役員会議、経営会議、全体朝会を英語で実施、社内資料を段階的に英語化している。また、TOEICスコアを昇格要件として示し、英語化の部署別見える化(ベスト5、ワースト5の発表)による英語化促進、社内英会話スクールの導入なども行っている。「社員みな一生懸命英語を勉強しています。人間やる気になればできるもので、数か月でTOEICのスコアを300点上げる人もいます。英語化のポイントはトップのコミットメントです」と葛城氏は語る。
楽天でも使用され、その効果が認められているのがe-ラーニング教材の「ATR CALL BRIX」。国際電気通信基礎技術研究所
で約20年間にわたり行われた音声言語研究の成果が詰め込まれたものだ。開発にあたったATR Learning Technolog
y社長の山田玲子氏は、学校現場の多様な要求も盛り込んで作り上げたと語る。教材は日本人の苦手なrとl、bとvなど30名以上の話者の発音による聞き分け課題、アクセントチェック課題、発音評定、語句並べ替え、空所タイピング、シャドーイング、ディクテーションな
ど、約90種類の学習課題からなる。各課題がレベル分けされ相当な量を持ち、語彙、発音、読解、リスニング、ライティング、スピーキングの英語の総合力が鍛えられるように構成されている。